マイホームの購入時には、住宅ローン控除をうけて税金負担を抑えることができます。
しかし、これから控除を受けるためには、2024年度の税制改正の条件をクリアできる、高性能な住宅を建てる必要があります。
本記事では、住宅ローン控除とはなにか、制度変更によって求められる住宅の省エネ性能をわかりやすく解説します。
2050年のカーボンニュートラルに向け、今後政府はさらなる住宅の高性能化を推進していく予定です。
ライフスタイルや地球環境についても考えながら、自分たちにあった家づくりをしましょう。
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除とは、個人が住宅ローンを利用してマイホームを購入する際に住宅取得のハードル軽減にともなう制度であり、正式には「住宅借入金等特別控除」と呼ばれます。
一定の条件を満たすことで所得税が減税されますが、所得税から全額控除できない場合は翌年に支払う住民税が減税されます。
住宅ローン控除を受けられる主な条件は次の通りです。
・住宅ローンの契約者の住居
・床面積が50㎡以上
・合計所得が2,000万円以下
・ローン返済期間が10年以上
・引越しまたは工事完了から6ヶ月以内に入居
土地のみの購入では、原則住宅ローンは適用されません。
控除される金額は年末時点での住宅ローン残高の0.7%で、控除される期間は最大で13年間です。
住宅の性能によって異なりますが、一年間での最大控除額は31.5万円です。
出典:国税庁「住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
所得制限や返済期間の最低ラインが決まっているため、自分が当てはまるかどうかを確認してみましょう。
住宅ローン控除を受けるためには、確定申告が必要です。
給与所得者の会社員である場合は会社が年末調整をしますが、新築住宅に入居した翌年は自分で確定申告をする必要があります。
住宅ローン控除制度変更
2024年度の税制改正により、住宅ローン控除制度を受けられる条件などが変更になりました。
これから家づくりをする際には、制度の内容についてくわしく理解しておきましょう。
2024年度以降の制度変更
2024年度以降の制度変更では、借入限度額の減額と省エネ基準に適合しないその他の住宅における住宅控除の適応除外が次のように決まりました。
住宅性能 | 2023年入居 | 2024・2025年入居 |
認定長期優良住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 |
認定低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 |
その他の住宅 | 3,000万円 | 0円 |
出典:国土交通省「住宅ローン減税」
2024年以降に入居する場合、省エネ基準に満たないその他の住宅は、住宅ローン控除の対象から外れます。
そのため、今後住宅ローン控除を受けるためには、省エネ基準に適合する住宅を建てる必要があります。
なお、申請時には省エネ基準以上の建物であることを証明できる、次のいずれかの書類が必要です。
・建設住宅性能評価書
・住宅省エネルギー性能証明書
上記の証明書は登録住宅性能評価機関や建築士が発行します。
省エネ基準とは
住宅ローン控除の対象となる省エネ基準とは、建物の有する省エネ性能の確保のために必要な基準であり、建物の構造や設備によって異なります。
指標は一次エネルギーと外皮性能の2つです。
一次エネルギーとは、石油や天然ガスなどの自然からつくられるエネルギーです。
省エネ基準で定められた一次エネルギーの量よりも、消費するエネルギーが低いまたは同程度であるほど、省エネ性能は高いと言えます。
一方、外皮性能とは建物の屋根や外壁、窓、床などの省エネ性能のことであり、室内と室外での熱の移動が低いほど省エネ性能が高いと言えます。
住宅ローン控除は、住宅の省エネ性能のレベルに応じて還付金が多くなる仕組みです。
ここからは、4つに分類された認定長期優良住宅、認定低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅のそれぞれの仕様について詳しく解説します。
認定長期優良住宅とは
認定長期優良住宅とは、長く住み続けられるための措置が講じられている住宅です。
長期優良住宅の基準をクリアし、認定を受けなければいけません。
主な認定基準は次の通りです。
・劣化対策:劣化対策等級3相当で数世代に受け継げる建物の構造体である
・耐震性:耐震等級2以上で地震に強い
・省エネルギー性:省エネルギー対策等級5かつ一次エネルギー消費量等級6を有する
・維持管理・更新の容易性:住宅設備などのメンテナンスが容易である
・居住環境:地区計画など各条例に沿った家である
・住戸面積:床面積が75㎡以上ある
・維持保全計画:定期的な点検やメンテナンス案が計画されている
・災害配慮:災害発生のリスクがある場合に措置を講じていること
出典:国土交通省「長期優良住宅のページ」
認定長期優良住宅は良質な住宅であることから、世代を超えて受け継ぐことが可能な住宅です。
耐震性や省エネ性だけではなく、維持管理の容易さも必要なため、耐用年数の短い住宅設備や配管などを容易に交換できるように設計されています。
また、メンテナンス計画を適切におこなうことで、長く良質な住宅を維持します。
認定低炭素住宅とは
認定低炭素住宅とは、二酸化炭素の排出量を抑えることに特化して設計された住宅です。
2012年に制定された都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)により、「低炭素建築物認定制度」が設けられ、認定を受けた住宅が認定低炭素住宅となります。
低炭素住宅の認定基準は次の通りです。
・外皮性能:Ua値およびnAc値が誘導基準に適合している
・一次エネルギー消費性能:省エネ基準よりマイナス20%以上削減できる
・再生可能エネルギー利用設備の導入:太陽光発電ステムなどの設置
・低炭素化に役立つ措置:HEMSやV2H充放電設備などの設置
出典:国土交通省「低炭素建築物認定制度 関連情報」
認定低炭素住宅は二酸化炭素の排出が抑えられるほか、自家発電システムやエネルギーを無駄なく使える設備があることで、省エネで地球環境に優しい住宅であると言えます。
ZEH水準省エネ住宅とは
ZEH水準省エネ住宅とは、年間のエネルギー消費量をゼロまたはマイナスを目指した、経済的、健康快適に暮らせる住宅です。
ZEH水準省エネ住宅は、次の基準を満たす必要があります。
・断熱等性能等級5
・一次エネルギー消費量等級6
ZEHとは「建物の高断熱化+効率的にエネルギーを使う住宅設備+創エネルギー」を実現することで、年間の一次エネルギーの収支ゼロを目指す住宅です。
一方、ZEH水準省エネ住宅はZEH住宅とは異なり、創エネルギーのための太陽光発電などの自家発電システムの設置は必要ありません。
ZEH住宅よりも緩い基準で建てられた住宅と言えるでしょう。
2050年のカーボンニュートラルの実現を目指し、政府では2030年にはZEH水準省エネ住宅性能を新築住宅における最低基準とする予定です。
省エネ基準適合住宅とは
省エネ基準適合住宅とは、住宅の断熱性能・気密性能が高く、冷暖房にかかるコストが抑えられた住宅を指します。
省エネ基準適合住宅は、次の基準を満たす必要があります。
・断熱等性能等級4以上
・一次エネルギー消費量等級4以上
省エネ基準適合住宅は、外気の影響を受けにくい住宅性能であることや、庇の設置などで日射をコントロールします。
ZEH水準住宅よりも求められる基準が低く、省エネ住宅の中でも建築コストが抑えられますが、税金の控除額も低くなります。
2022年に「建築物省エネ法等改正案」が可決されたことにより、2025年以降に建てられる新築集宅は、省エネ基準の義務化が予定されています。
これまで最高等級であった断熱等性能等級4は、省エネ基準の義務化により省エネ性能の最低基準となる予定です。
今後新築住宅を建てるのなら、省エネ適合住宅を建てられる住宅メーカーであるかどうかがひとつの指標になるでしょう。
まとめ
住宅ローン控除は一定の条件下で住宅ローンを組んだときに、所得税が減税される制度です。
これまでは省エネ住宅ではない住宅でも住宅ローン控除の対象でしたが、2024年の入居からは、省エネ基準に適合する住宅でないと控除の恩恵を受けられません。
住宅性能別に住宅ローン控除の最大控除額が異なるほか、今後も住宅の省エネ性能は最低基準の引き上げが予定されています。
どのようなレベルの省エネ性能にするのかは、ライフスタイルや資金面、実際の住み心地を体感してみると選択しやすいでしょう。
住宅公園では、各ハウスメーカーで異なる住宅性能について、見て聞いて詳しく知ることが可能です。
また、住宅ローン控除などの制度は頻繁に更新されます。
住宅について気になることがあれば住宅公園へ、お気軽にご来場ください。