新築住宅の省エネ化は、近年加速しています。
2050年のカーボンニュートラルに向け、政府では住宅の省エネ性能向上のためにさまざまな取り組みをおこなっています。
本記事では、省エネルギー住宅とはどのような住宅なのか、ZEH住宅との違いについても解説します。
これからマイホームを建てるなら住宅性能を理解した、後悔しない家づくりをおすすめします。
省エネルギー住宅とは
省エネルギー住宅とは、冷暖房のエネルギー消費を抑えることを目的とした住宅です。
冷暖房システムは家庭のエネルギー消費の30%を占めますが、省エネルギー住宅においては、少ないエネルギーでの稼働を実現できます。
政府では、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みの一つとして、住宅の省エネ化を進めています。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量を全体として0に目指すことです。
2030年までの新築住宅において、ZEH水準の省エネ性能が確保されるほか、6割に太陽光発電設備を導入することを取りまとめています。
直近では、2025年に省エネ住宅の義務化が予定されており、住宅施工のメインとして打ち出すハウスメーカーも増えています。
省エネ住宅は地球にやさしいのみならず、省エネが叶うことで経済的にも負担が減り、健康的に暮らせるメリットがあります。
これから新築住宅を建てるのなら、省エネ住宅義務化に対応した家づくりについて、しっかりと考える必要があると言えるでしょう。
住宅の省エネを実現するための3つの柱
経済産業省 資源エネルギー庁では、家庭向けの省エネ住宅において、次の3本の柱で大きな省エネ効果を生み出すとしています。
- ・断熱
- ・日射
- ・気密
3本の柱をコントロールできる住宅は、省エネにつながります。
ここからは、3本の柱にどのような効果があるのかを解説します。
断熱
断熱とは、外気と室内の熱移動を減らすことを指します。
高断熱な住まいは魔法瓶のような作用があり、少ないエネルギーで効率よく冷暖房を運転できます。
熱は、窓、壁、屋根、床を通して伝わるため、建材の性能を高めることで高断熱な住まいが実現可能です。
住宅の断熱を考えるとき、窓の性能が最も重要です。
冬場の暖房時には、全体の58%が開口部である窓から流出します。
一方、夏場の冷房時には、全体の73%が開口部である窓から流入します。
「断熱サッシ+複層ガラス」を採用するなど、窓の断熱性能を上げるのが省エネに効果的と言えるでしょう。
2000年に施工された「品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」においては、断熱等級5が最高基準です。
これまで、省エネルギー基準に相当する断熱等級は等級4でした。
2025年に予定されている省エネルギー住宅の義務化では、新築住宅における断熱等級4は新築基準の最低基準になることが予想されています。
今後、新築住宅を建てるなら、省エネ住宅としてのさらなる性能の向上が求められると言えるでしょう。
断熱性能は、「UA値(断熱性能評価)」で計測可能です。
UA値が低いほど、省エネ性能は優れています。
各ハウスメーカーでは、UA値を公表することで断熱性能を数値化しています。
気になるハウスメーカーで比較してみるとよいでしょう。
日射
屋根・天井、外壁、窓から入り込む日射よって室内温度は変わりますが、とくに影響を受けやすいのが窓からの日射です。
夏の陽射しが部屋に入り込むと、室温は上昇します。
日射熱は、次の遮蔽物の建築・設置・性能によって、室内の温度が上がりすぎることを予防可能です。
- ・庇(ひさし)
- ・窓
- ・屋根・外壁
- ・落葉樹
- ・カーテン など
日射遮蔽をすることで、2~4割の冷房エネルギーを減らせるでしょう。
住宅設計では、高い位置からの日射を遮ることで、夏場の強烈な太陽光が入るのを緩和できます。
また、熱還流率の低い「オール樹脂サッシ+複層ガラス」にすることでも、日射を大幅にカットできます。
屋根や外壁に通気層を設けたり、背の高い樹木を植えたりすることでも、日射からの影響を少なくすることが可能です。
昨今では、『パッシブデザイン』と言われる設計が注目されています。
これまでは夏の高い陽射しを遮ることのみが重要視されていましたが、パッシブデザインでは冬の低い日差しを積極的に取り入れ、暖房効率を上げる効果に期待できます。
自然のエネルギーをうまく活用することが、今後の家づくりにおけるキーポイントとなるでしょう。
気密
気密とは、住宅の外部と内部との隙間を減らし、室内に外気が入るのを防ぐことを指します。
空気の移動を最小限に抑えることで、次の効果に期待できます。
- ・室内温度を一定に保てる
- ・断熱性能を保てる
- ・建物躯体の結露を防ぐ
- ・室内空気が循環する
- ・遮音性が高まる
空気が漏れにくい家は冷暖房が効率的になるため、省エネルギーでも健康的・快適な生活が送れます。
とくに気を付けたいのが、冬場のヒートショックです。
ヒートショックとは、温度差のある場所へと移動することで血圧が急激に上下し、脳卒中や心筋梗塞を発症することを指します。
とくに高齢者の入浴時に多いですが、高気密の家であれば室内温度が一定に保たれるため発症を防げます。
未来の自分や家族の健康も考慮した家づくりをすると、あとあと後悔することは少ないでしょう。
気密は風の通りを遮断するため、熱の移動を防ぐ断熱性能の本来の働きを維持できます。
断熱性ばかりが高くなってしまうと、壁の外と内で気温差が生まれることにより、建物の躯体内に結露が発生します。
結露を放置すると、カビやシロアリが発生する恐れがあります。
気密にバラつきがあると、空気の循環がうまく作用しません。
気密性を一定に保つことで循環作用がうまれ、室内に嫌な臭いが留まることを防ぎます。
空気移動が過剰にならないよう、バランスをとって設計する必要があると言えるでしょう。
家づくりにおいては、断熱・気密のどちらも高性能であることが、家の室温を保持するために重要です。
気密性を高めると、建物の劣化抑制にも期待できるでしょう。
省エネ住宅とZEH住宅の違い
省エネ住宅とZEH住宅は、認定基準に違いがあります。
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は次の3つの基準を含め、一年間の一次エネルギー消費量をおおむね0にした住宅を指します。
- ①窓や外壁など、住宅の外皮性能を上げることで冷暖房効を効率化する
- ②一次エネルギーを有効活用できる、給湯器などの住宅設備を導入している
- ③太陽光発電システムを搭載し、エネルギーをつくる
一次エネルギーとは石油、天然ガスなどの自然界に存在するエネルギーを指します。
ZEH住宅では、エネルギー消費を抑える構造や設備を取り入れるとともに、家で消費するエネルギーを自らつくり出す設備が必要です。
ZEHをクリアできる基準は、次の通りにかなり厳しくなっています。
- ・UA値0.40~0.60以下(地域により異なる)
- ・一次エネルギー消費基準値を20%以上削減できる住宅設備の設置
- ・再生可能エネルギーをつくり出す太陽光発電システムなどの設置
住宅性能だけではなく高性能な住宅設備も必要です。
ZEH住宅は省エネ住宅よりも優れた住宅性能であるため、次のメリットがあります。
- ・さらなるランニングコストの削減
- ・災害時に備えられる
ZEH住宅は省エネ住宅よりも省エネルギーで住まえるほか、災害に備えられる家でもあります。
たとえば、太陽光発電システムを設置している家であれば、停電などがおこっても自立運転で電気を引き続き使用可能です。
ライフラインを確保できるため、災害時に安心な家づくりが実現します。
どちらの基準で家づくりをするかは、ライフスタイルによっても異なるため、住宅メーカーとも相談して決めていくとよいでしょう。
まとめ
省エネ住宅とは、冷暖房のエネルギー消費を抑えることを目的とした住宅です。
省エネには、断熱、日射、気密の3本の柱があり、それぞれが高性能になることでより住宅性能が高められます。
住宅の省エネ化が求められる昨今では、家づくりの際に住宅性能についてもしっかりと把握したうえでの計画が、重要と言えるでしょう。
家づくりでは、環境への配慮とライフスタイルのバランスを取ることが大切です。
さまざまな基準が存在するなかで大切なのは、自分のライフスタイルに合った家を建てることと言えるでしょう。
住宅公園では、住宅仕様などが異なる各ハウスメーカーに質問・相談が可能です。
家づくりで分からないことがあれば、ぜひ住宅公園へ、お気軽にご来場ください。