日本は地震大国と言われるとおり、これまで多くの地震が発生し多くの人命が失われてきました。
家族やマイホームを守るためには地震に備えられるような家の構造が必要ですが、どのような地震対策を講じればよいのか難しく感じることもあるでしょう。
本記事では、地震対策である耐震・免震・制震の3パターン別に構造の違いやメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
それぞれの特徴から自分に合った地震対策選びの参考にしてください。
意外と知らない地震対策
地震対策が重要である背景や、耐震・免震・制震それぞれの構造の違いについて解説します。
当たり前だからあまりわかってない地震対策
世界で起こるマグニチュード6以上の大きな地震は、おおよそ5分の1が日本周辺で発生しています。
平成7年(1995年)に起こった兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)と、平成16年(2004年)の新潟県中越地震(東日本大震災)では、観測史上最大震度7を観測し、多くの死傷者がでました。
二次災害である津波や火災をのぞいては、建物の倒壊による窒息や圧迫が原因で多くの方が亡くなっています。
建物が倒壊しないような構造は、家ができる地震対策として最も重要と言えるでしょう。
日本では昭和25年(1950年)に建築基準法が施行され、最低限の耐震性をもつ建物を建築することが法律で義務付けられており、地震対策をしていない家はありません。
家選びで注目されることは少ないですが、地震大国日本では建物の地震対策についてもしっかり知っておく必要があると言えるでしょう。
耐震・免震・制振って何が違うの?
家を地震による倒壊から備える建物の構造として、耐震・免震・制振があります。
耐震についてはある程度のレベルが建築基準法で義務化されていますが、免震・制震については義務化されていません。
したがって、家を建てるときは建築基準法をベースとして、どのような耐震レベルまで上げるかを決める必要があります。
聞いたことはあっても、地震に備えられる具体的な構造について知る方は多くはないため、ここから詳しく解説します。
耐震とは
耐震とは、地震による揺れに耐えられるように建物の構造そのものを強くする構造を備えた地震対策です。
具体的には、柱と柱の間に筋交いや接合金物を入れて補強します。
地震のパワーは重量のある屋根や柱に負担がかかりやすいため、耐震では影響をうけやすい部分を強固なものにし、建物の揺れを分散させる効果を期待します。
耐震は地震対策における一般的な構造として、戸建てに限らずマンションなどのさまざまな建物に採用されています。
免震とは
免震とは、地震の揺れが建物へ伝わりにくくするための構造を備えた地震対策です。
建物の基礎と本体の間に、免震装置を入れることで地盤とを切り離す効果が生まれ、建物を揺れにくくします。
免震装置には揺れを抑えるダンパーのほか、建物を支えてゆっくりと移動させるアイソレータを使用します。
免震は耐震や制震とは異なり、建物本体の揺れを軽減することが可能です。
大きな地震が起こっても建物への影響が抑えられ、倒壊のリスクを抑えることができます。
制震とは
制震とは、地震の揺れを吸収する装置を建物本体に備えることで、揺れを軽減する地震対策です。
ダンパーなどの制震装置を建物の骨組みとなる構造体に備えることで、建物の揺れを抑えます。
地震が起こると上階のほうが揺れは大きくなりますが、制震構造の場合は上階の揺れが抑えられます。
耐震・免震・制振、どれが一番自分に合う?
自分に合った耐震性能の家を選ぶために、耐震・免震・制振のそれぞれのメリット・デメリットを解説します。
どのような対策を採用するのか、コストなども含めて検討しましょう。
知っておくべき耐震・免震・制振のメリット・デメリット
耐震・免震・制震のそれぞれのメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット | |
耐震 | ・コストが安い ・台風で起こる強風にも効果がある ・間取りの設計がしやすい | ・建物へのダメージが残る可能性がある ・家具の転倒防止が別途必要 |
免震 | ・家にいても揺れを感じにくい ・家具の転倒リスクが少ない ・建物本体へのダメージが少ない | ・コストがかかる ・施工業者が限られる ・縦揺れの抑制は期待できない |
制震 | ・建物へのダメージを抑えられる ・比較的コストがかかりにくい ・繰り返す揺れに強い | ・強い地盤でないと制震装置の設置が難しい ・1階の揺れは軽減しにくい |
ここからはひとつずつ詳しく解説します。
耐震のメリット・デメリット
耐震は柱と柱にある壁を強固にする構造であり、以下のメリットがあります。
・コストが安い
・台風で起こる強風にも効果がある
・間取りの設計がしやすい
コストがかかりにくい点で優秀である耐震は、採用しやすいことがメリットと言えるでしょう。
最低限の耐震性能は、建築基準法で定められています。
しかし、それ以上に強固なつくりを求めるのなら、費用をかけて耐震レベルを上げることも可能です。
構造の規制上、開口部の大きさなどが制限される場合はあるものの、間取りの設計は比較的自由です。
耐震のデメリットは以下のとおりです。
・建物へのダメージが残る可能性がある
・家具の転倒防止が別途必要
構造上、地震の揺れが建物に影響しやすくダメージとして残る場合があること、また、家具の転倒リスクがあるために転倒防止策が必要です。
壁と家具をL字金具で固定したり、突っ張り棒と粘着マットを組み合わせたりして、家具が地震による揺れに連動しないようにするとよいでしょう。
耐震は繰り返す余震の揺れに弱い特徴があります。
建物本体は丈夫であっても、柱などの建物内部が損傷する可能性があるでしょう。
大きな地震の発生後は、安全性を高めるために施工業者などへの点検をおすすめします。
免震のメリット・デメリット
免震は建物本体がうける揺れの影響を抑えられるため、以下のメリットがあります。
・家にいても揺れを感じにくい
・家具の転倒リスクが少ない
・建物内部へのダメージが少ない
揺れを吸収する効果のある免震装置が地盤と建物を切り離すような作用があるため、建物そのものが揺れにくい特徴があります。
家具の転倒リスクが少ないため、事故や揺れによる不安やストレスも抑えられます。
また、柱や筋交いなどの建物の内部への影響も抑えられるため、地震による建物へのダメージが少なく、家という資産も守られると言えるでしょう。
一方、免震のデメリットは以下のとおりです。
・コストがかかる
・施工業者が限られる
・縦揺れの抑制は期待できない
導入コストが300〜600万円と高額であることや、施工業者が限られているため設置のハードルが高いことがデメリットです。
定期的な点検やメンテナンスが必要となることもあり、ランニングコストもかかるでしょう。
縦揺れの直下型地震には免震装置の性能が十分に発揮できないことも、導入が躊躇される要因のひとつです。
制震のメリット・デメリット
建物内で地震の揺れを軽減させる制震には、以下のメリットがあります。
・建物へのダメージを抑えられる
・比較的コストがかかりにくい
・繰り返す揺れに強い
制震は、耐震よりも地震に強く、免震よりもコストがかかりにくいという特徴があります。
地震が起きたとしても建物へのダメージが抑えられるため、制震装置のメンテナンスなども基本的に必要ありません。
耐震よりも地震による揺れを軽減できることから、家具転倒のリスクも少なくなります。
繰り返す揺れにも強く、余震への影響も抑えられます。
一方、制震のデメリットは以下のとおりです。
・強い地盤でないと制震装置の設置が難しい
・1階の揺れは軽減しにくい
装置は地盤の影響を受けやすいため、強い地盤に建つ建物でないと効果が十分に得られない点がデメリットです。
また、2階以上の上階の揺れは軽減されるものの、地面に近い1階においては揺れを抑える効果が乏しい特徴があります。
とくに1階の家具の転倒防止対策は十分におこなう必要があるでしょう。
まとめ
耐震は建物そのものを強くし、免震は地盤からの影響を抑え、制震は建物内で揺れを軽減します。
耐震はコストがかかりにくいため採用されることが多いです。
一方、免震は数百万円の導入コストに加えランニングコストもかかってきます。
耐震と免震の中間に位置する制震は、装置を設置する建物の地盤に影響されやすい特徴があります。
それぞれにメリット・デメリットが異なるため、どれだけ地震に備えるのかをコストとのバランスを見極めながら検討するとよいでしょう。
家づくりでは、住宅デザインや住宅設備の機能性に目が行きがちですが、地震大国の日本に住むのなら家の耐震性能についてもしっかりと違いを把握することをおすすめします。
自分はどの地震対策が合っているか知りたければ住宅公園へ
地震対策にも耐震・免震・制震別にそれぞれメリット・デメリットがあります。
コストや効果の面でバランスをとりながら、自分にあった地震対策を取ることが重要です。
住宅公園では、家づくりのプロが在籍しており、希望点や不安点をヒアリングしながら、一人ひとりに合ったプランをご提案します。
耐震・免震・制震、どの地震対策が自分に合うかで迷ったときは、気軽に相談できる住宅公園へお気軽にご来場ください。