昨今、光熱費の高騰が深刻化するなか住宅には高い省エネ性能が求められており、断熱性能の指標がZEHを超えるHEAT20(ヒート20)が、高い注目を集めています。
本記事では、HEAT20とはどのような特徴の住宅なのか、G1、G2、G3によって分けられる基準やメリット・デメリットなどを解説します。
より優れた住宅性能を求める方は、現在の省エネ基準ではなく、より高断熱住宅が叶うHEAT20をぜひ検討してください。
HEAT20とは
HEAT20とは、一般社団法人「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会(Society of Hyper- Enhanced insulation and Advanced Technology houses for the next 20 years」」を指します。
建材メーカーや住宅会社などの住宅のスペシャリストによって構成され、主に住宅の省エネに関する設計・技術の調査研究や技術開発をおこなっています。
ここからは、そもそも住宅の断熱性能とはどのようなものなのか、基本と重要性、HEAT20の特徴を解説します。
断熱技術の基本と重要性
住宅の断熱性能が高いほど住宅内部から外部へと熱が逃げにくくなり、冬の寒さや夏の暑さに影響されにくい家づくりが叶えられます。
この際に大切なのは、外皮と呼ばれる屋根、壁、窓、床などの性能であり、外皮性能が優れた住宅ほど高断熱な家と言えます。
日本では高温多湿な環境なことから、夏の暑さをしのげる家づくりがこれまでの概念であったため、冬の快適性についてはあまり重要視されていませんでした。
しかし、石油ストーブが主流の時代にオイルショックが起こったため、暖かさの逃げない省エネ住宅が着目されるようになりました。
1979年の「省エネ法」が制定されたのをはじめ、2014年には国の「エネルギー基本計画」に石油などの一次エネルギーの年間消費量をおおむねゼロにする、ZEHが組み込まれるようになりました。
2030年までには新築住宅の平均で、ZEHを目指すことを目標にしています。
HEAT20の特徴
HEAT20では、地域区分によってG1、G2、G2といった基準ごとに求められる室温、省エネルギー性能、外皮性能水準を定めています。
地域区分は、次の通り1から8まであります。
引用:一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター「住宅の省エネルギー基準」
地域区分によって異なるUA値とηAC値は、2025年4月から義務化される断熱等級4に値する数値です。
G1、G2、G2でどれくらい断熱性能が異なるのかを見ていきましょう。
<室温>
<省エネルギー>
<外皮性能水準>
引用:一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会「住宅シナリオと外皮性能水準」
冬場の最低室温はG3が最も安定しており、暖房負担削減率は平成28年基準と比べ約55~80%と高い省エネ性能があります。
外皮平均熱貫流率UA値は、G1レベルでもZEH基準である断熱等級5を超えており、さらに高断熱である断熱等級6はG2水準、断熱等級7はG3水準と同程度となっています。
快適さと節約を両立!HEAT20断熱の効果とは?
HEAT20の基準をクリアすることで得られるメリットや効果、注目される理由を解説します。
また、導入する際の注意点についてもまとめているため、これから導入しようかと考える方はぜひ参考にしてください。
HEAT20のメリット・効果
HEAT20の基準をクリアすることで得られるメリットや効果は次の通りです。
・一年中快適な室内温度を保てる
・建物の構造体や窓などの結露やカビの発生を抑えられる
・光熱費を抑えられる
HEAT20の基準をクリアし、エネルギー効率の高い家づくりをおこなうことで、外気に左右されにくい室内環境が叶い、家の快適性が向上します。
たとえば、HEAT20 G2レベルの基準を満たした場合であれば、暖房機器を使用せずとも国内の全区域において冬場の室温がおおむね13℃を下回ることはありません。
湿度が高く温度差があるほど結露は発生し、壁紙や窓などを劣化させます。
それだけではなく、建物内部にある重要な構造体にまで影響を及ぼし柱などを腐食させるほか、シロアリが繁殖する原因にもなりかねません。
結露を放置するとカビが発生し、カビをエサとするダニなども繁殖します。
死骸やふんを吸い込むことでアレルギーを発症し、シックハウス症候群やアトピーなどにつながるおそれもあります。
室内温度が保たれるHEAT20の基準を満たした住宅は結露やカビを抑制させ、健康的に住まえる住宅と言えるでしょう。
室温の上がり下がりが緩やかであることから、冷暖房機器に使うエネルギーを削減できます。
したがって、年々高騰する電気代やガス代を抑えることが可能です。
光熱費の上昇に伴う今後の家計負担を食い止めるためには、優れた住宅性能が大切です。
HEAT20が注目される理由とは?
HEAT20が注目される理由には、2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」が背景にあります。
地球では温暖化により平均気温が上昇しており、大型台風や局地的な雨の発生件数の増加、砂漠化も深刻です。
地球温暖化を防ぐため、温室効果ガスの排出を低減する省エネ住宅の普及が重要視されています。
住宅の省エネ基準の見直しがされるなか、2030年までにはZEH水準である断熱等級5を新築の標準にする動きがあります。
これまでの断熱水準の低かった日本の住宅から意識が変わり、より高い断熱基準をもつHEAT20が注目を集めているのです。
導入を検討する際の注意点
HEAT20を導入する際の注意点は次の通りです。
・建築コストが高くなる
・メンテナンス費用がかかる
HEAT20の基準を満たした住宅を建てる際は、高品質な断熱材を充填するほか高断熱の窓を採用するなど、建材や設備にコストがかかります。
G1よりもG2など、グレードが高いとより多くの建築費用が必要です。
性能を維持するためのメンテナンス費用も必要です。
HEAT20の基準を満たす住宅に設置される高性能な換気設備は、耐用年数が20年程度であるため、交換時にかかる費用も把握しておくと安心でしょう。
自宅に導入!HEAT20断熱
自宅にHEAT20を導入する際の方法や、どのように活用されているのかを紹介します。
HEAT20を導入するか迷っている方に向けて、導入に向いている方の特徴についてもまとめています。
HEAT20の導入ステップ
自宅にHEAT20断熱を導入するためには、次のステップを踏みましょう。
・HEAT20の基準を満たした建物を建てられる住宅会社を探す
・費用面をふくめて自分に合った家づくりができるかを考える
HEAT20の基準を満たした住宅に住みたくても、どこの住宅会社でも建てられるわけではありません。
したがって、家を建てるエリアで施工できる住宅会社を探すことからはじめる必要があります。
確かな技術や専門的な知識があるかどうかは、HEAT20の施工実績でもわかります。
安心して家づくりを任せられるよう、依頼前に確認しておきましょう。
また、一般的な住宅よりも高額な建物になるほか、HEAT20は地域によって各グレードに求められる性能基準が異なります。
費用面と性能面とのバランスがとれるよう、総合的に判断していく必要があります。
HEAT20の活用事例
HEAT20基準の住宅を施工できる住宅会社が増えてきています。
新築住宅では、断熱材や窓に高断熱な建材を選ぶことで叶いますが、リフォームでもHEAT20の断熱基準をクリア可能です。
具体的には、外壁や屋根の断熱塗装のほか、断熱材や断熱パネルを交換したり内窓の追加工事をしたりして、住宅全体の断熱性能を高める工事をおこないます。
HEAT20はこんな人におすすめ
HEAT20は2050年のカーボンニュートラルを実現するため、一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会によってつくられた、住宅の断熱性能の指標です。
G1、G2、G3と3種類の断熱性能のレベルがあり、地域によって求められる性能は異なります。
地球の未来を見据えた家づくりが叶うHEAT20は、今ある省エネ基準よりも優れた住宅性能で、より住み心地の快適性を増したい方や、二酸化炭素の排出量を抑えることで地球に貢献したいと考える方におすすめです。
HEAT20の住宅を建てる際は、基準に適合した住宅を建てられる住宅会社であるのか、予算や快適性のバランスのとれたプランニングをしてくれる住宅会社であるのかをしっかりと見極めましょう。