昨今の住宅では、耐震性の高い住宅構造に注目が集まっており、家づくりにおいて「耐震等級」という文言を見たり聞いたりする機会も多いのではないでしょうか。
しかし、実際のところどのくらいの耐久性が望ましいのか、耐震等級の違いでどのくらいの差があるのかなど、分かりにくい部分もあることでしょう。
本記事では、安全な住宅としての耐震性の高さとはなにか、耐震等級の基準や耐震性の重要性について解説します。
建築費用を含め、実際に建てる際のポイントについてもまとめていますので、これからの家づくりで家の耐久性について考える方は参考にしてください。
地震に耐えられる家とは?安全な住宅の条件を解説
地震に強く耐えられる家とはどのような家なのか、地震における被害状況から家族の身を守れる住宅とは何かを考えていきます。
全体の概要的な説明
耐震等級の低い構造で家を建てた場合、地震の大きなエネルギーを加えられると木造住宅は変形し、倒壊する危険があります。
ここ20年間、度々大きな地震がおこっています。
2007年の能登半島地震や新潟県中越沖地震、2008年の岩手・宮城内陸地震、2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)、2016年の熊本地震、2024年の能登半島地震などです。
地震によって震災の死因は異なりますが、圧死、焼死、溺死が多くを占めます。
住宅内であれば火災が起きても避難経路が確保できるほか、落下物などで負傷しないように建物が倒壊しないこと、家具家電が固定されていることが重要と言えるでしょう。
熊本地震で実証された耐震等級3の強さ
最大震度7の地震が短期間のうちに2回起きた2016年の熊本地震では、耐震等級3の建物の耐久性が実証されました。
参考:国土交通省 住宅局「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント」
国土交通省によると上記のグラフの通り、耐震等級3の住宅は大きな損傷がみられず、被害が少なかったと調査報告書に記してあります。
このことから、耐震等級3の建物であれば、大地震が起きても家族の安全が守られ、のちの生活への影響を最小限に抑えられると言えるでしょう。
家を建てる際に押さえておきたい耐震等級の基準
耐震等級とは、住宅構造からどのくらいの耐久性があるのかを3段階に分別した判断基準です。
2000年に「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」として施行されました。
耐震等級1、2、3それぞれの特徴から、耐久性の違いを理解しましょう。
耐震等級1の特徴とリスク
耐震等級1は、建築基準法において最低限の耐震性をもち、新耐震基準を満たしています。
具体的には、震度6や7程度の数百年に一度に起こる地震では崩壊しない、あるいは震度5程度の数十年に一度に起こる地震では損傷しないと想定されています。
崩壊は避けられても、損傷具合によっては人が住むことは困難になり、建て替えが必要になるケースも考えられるでしょう。
耐震等級2のメリットとデメリット
耐震等級1の1.25倍の耐震性をもつのが、耐震等級2です。
大地震での建物損傷の軽減に期待できます。
耐震等級2の建物は長期優良住宅である条件のひとつをクリアできるほか、学校や病院、警察などの災害時の避難所として指定される公共施設にも必要な強度をもっています。
大規模修繕は必要なくても、地震の規模によっては改修が必要な場合もあるでしょう。
耐震等級3が最も推奨される理由
耐震等級3は、住宅性能表示制度で定められたなかの最高等級です。
耐震等級1の1.5倍の耐震性があり、災害時の救護活動などの拠点ともなる消防署と同じ強度があります。
住宅の耐久性だけではなく、耐震等級3であれば次のメリットもあります。
・地震保険料が最大の50%割引
・住宅ローン金利の引き下げ
・資産価値の向上
地震保険料は耐震等級1では10%、耐震等級2であれば30%の割引がありますが、耐震等級3であれば最大の50%割引がうけられます。
ほかにも、住宅金融支援機構が提供している長期固定金利の「フラット35S」に申込みができるため、一定期間において金利優遇がうけられるメリットもあります。
耐震性の高い建物であれば、建物や住まう人の安全が守られるほか、建てた後の生活を豊かにできるとも言えるでしょう。
なぜ今、耐震が重要なのか?
住宅の耐震性能が注目されているなか、これからの家づくりで最適な耐震等級とはどれなのか、また耐震機能以外の地震に強い住宅構造について解説します。
地震大国日本における最適な耐震等級とは?
建築基準法では耐震等級1以上の建物であればよいですが、これまでの地震の被害状況によると、耐震性の高い建物であればより震災に備えらえた生活が実現します。
家が倒壊しなければよいという考えであると、そのときの安全は守られても被災後の生活の復興に時間がかかるデメリットについても考えなければいけません。
今後の発生が危惧されている南海トラフ地震や首都直下型地震などの大地震では、甚大な被害が出ると予想されています。
これから家づくりをはじめるのなら、耐震等級2もしくは3の高い耐久性をもつ住宅構造への検討をおすすめします。
耐震と免震・制震の違いとは?
地震に備えた家づくりは耐震のほかにも、免震・制震構造でも叶います。
次にそれぞれの特徴をわかりやすくまとめました。
・耐震:揺れに耐える構造
・免震:揺れの伝わりを防ぐ構造
・制震:揺れを吸収する構造
耐震構造では、柱や梁を強くしたり耐震金物を用いて建物自体を強くしたりするのに対し、免震構造では、地盤と建物の間に免震装置を設置することで、建物に伝わる揺れのエネルギーを大幅に軽減させます。
一方、制震構造では、建物の柱などの構造体に制震装置を設置することで揺れが吸収され、建物への伝わりを抑えるのが目的です。
より高い耐震性を高めるのなら、耐震だけにこだわらず、免震・制震技術をもつハウスメーカーも検討するとよいでしょう。
耐震性能のランクと選び方
注文住宅を建てる際には、耐震性能を選べることがほとんどです。
ハウスメーカーや工務店では、独自の基準で設計をおこなうことも多いため、「絶対に耐震等級3の建物を建てたい」などと要望がある場合は、見積り前に伝える必要があります。
一方、ハウスメーカーや工務店の住宅ラインナップから選んだ場合は、建てられる耐震性能が決まっていることが多いため、標準仕様からの変更では別途出費が必要になるでしょう。
耐震等級2または3を希望される場合、専門機関の審査と認定を受ける必要があります。
構造計算などで耐震等級3となっても、審査と認定を受けないと「耐震等級3相当」とされ、各種優遇措置や割引制度を受けられません。
耐震等級3の建物を建てて住宅ローン金利の優遇や地震保険料の割引を受けたいときには、「耐震等級3」の建物を建てられるかを住宅会社の選定項目のひとつにしましょう。
耐震等級を取得するための流れと注意点
耐震等級を取得した家づくりを行う際の流れや注意点、費用相場について解説します。
住宅設計時に耐震等級を確保するためのステップ
耐震等級を確保するためには、国土交通省に任命・監督される第三者機関に「住宅性能評価」の審査を依頼する必要があります。
おおまかな流れとしては、次の通りです。
①設計性能評価
②建築工事着工
③建築性能評価
④引き渡し
建築前と建築後のそれぞれの段階で、申請・評価・交付の3つの段階を踏まなければいけません。
また、工事中にも複数回の検査が必要です。
耐震等級の認定を受ける際に押さえておきたいポイント
耐震等級の認定を受ける際の住宅性能評価書ですが、耐震基準適合証明書と混同されることがあります。
耐震基準適合証明書は主に既存住宅の耐震改修で発行される証明書です。
現行の耐震基準を満たすかどうかを証明するためのものであるため、耐震等級の表示はありません。
耐震等級別の費用相場とは?費用対効果を徹底解説
耐震等級の認定を受けるために必要な費用相場は次の通りです。
・設計住宅性能評価:10~20万円
・建築住宅性能評価:15~25万円
・構造計算書作成費用:10~30万円
・申請手数料・数千円~1万円
最低でも30万以上の費用がかかります。
一方、住宅ラインナップで耐震性能3が標準仕様となっている場合、認定費用があらかじめ見積価格に組み込まれていることが多いでしょう。
地震に強い家づくりのために、耐震等級を最優先に考えよう
耐震等級2や3などの耐久性の高い建物であれば、地震に備えた家づくりが叶います。
とくに耐震等級3は耐震等級1の1.5倍の耐震性があり、熊本地震においても耐久性の高さが証明されています。
今後の発生が予想されている大地震もあることから、これから家づくりをおこなう際は耐震性能についてもしっかりと考慮して計画していくことをおすすめします。
ご相談は住宅公園へ!
住宅公園では、さまざまなハウスメーカーや工務店の建てた住宅を見学できるほか、担当者に疑問点を相談することも可能です。
住宅会社によって異なる性能やデザイン、費用を比較できるため、依頼先の選定で悩む方は一度住宅公園へご来場ください。